Oda Keikoの仕事情報

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夫婦50割DE映画レビュー「ジョジョ・ラビット」

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ジョジョラビット


2/10、米アカデミー賞授賞式当日になってしまいました。毎年、この時期になると、夫婦でアカデミー賞作品賞候補作を見に行っています。共に10代の頃から洋画を中心に映画を見てきて、最初のデートで見た映画はイーストウッド監督の「パーフェクト・ワールド」(新宿ミラノ座)だったというわが家も、夫が50歳を超え、夫婦割引というサービスが使えるように。ひとり1200円で見た映画の感想を時間があるときにアップしていこうと思います。

ネタバレありです。なるべく後半の核心的なところはぼかすようにしていますが。

 今回の作品賞候補作は「パラサイト 半地下の家族」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」「ジョーカー」「マリッジ・ストーリー」「アイリッシュマン」を見ていますが、レビューはこれしか間に合わなかった。一番最近見たこちら…。

ジョジョ・ラビット」

www.foxmovies-jp.com

妻(ライター) ★★★☆☆

タイカ・ワイティティ監督の存在は、マーベル映画「マイティ・ソー バトルロイヤル」で知ったのだけれど、その映画でソーというアベンジャーズの3大ヒーローのひとりに数えられるほどの存在をただのダメ男にキャラ変させていたので驚いた。むちゃくちゃなんだけど、物語を最後まで引っ張っていく力(勢い)がある。この映画も同じく、スローモーションなどを多様した映像や笑いやキャラクターの強さで、持っていった感じ。ただ、ナチス統制下にあり弾圧と監視の厳しいドイツの町というシチュエーションを一応、リアル路線で描くからには、監督にはそういうルーツがあるのでは。でも、ニュージーランドの人じゃなかったっけ? ワイティティというのはマオリの名前では?と思ったら、お母さんがユダヤ系の人らしい。コーエン兄弟と同じ、コーエンという名字も持っているらしい。なるほど。

第二次世界大戦末期、ヒトラーを崇拝する少年とその母親が小さな町で暮らし、家の中にある重大な秘密を抱えつつなんとか戦争を生き延びようとしているが、ドイツの敗色が濃くなり、激化する戦いが母子をも追い詰めていく。

私にも息子がいるので(しかも男児らしくおバカさんだ)、母子のシーンはいちいち共感して見た。厨二病入っていて、ナチスに傾倒するおバカな息子だけれど、母にとっては誰よりも大切だ。彼の思想を全否定しないのも、きっと息子の身を守るため。そんな強い愛情をにじませるスカーレット・ヨハンソンの演技が印象的。

もし、自分がこういう状況に置かれたら、息子を守るために自分が生き抜くことを最優先して危ない行動は取らないだろうなぁ、と思う。そして、きっとそれは生物としては正しい。しかし一方で、子どもたちが生きる未来を切り開くためには、たとえ子どものそばにいられなくなっても自分の正義を貫くことも必要なのかなとも思う。考えさせられた。

ただ、正直、全体として想定外の展開はほとんどなかった。「えっ」となったのは序盤の手榴弾の失敗ぐらい。母親の靴ばかり写していたのも、あーそういうことになるんだろうなと2回目ぐらいで確信。夫と同じく、この題材の映画は星の数ほど見てきているけれど、夫婦50割しているぐらいの年齢の私たちのことはとりあえず置いておいて、うちの息子のようなローティーンから洋画離れしている20代ぐらいまでに戦争の恐ろしさを伝えるには、このぐらいポップな見せ方でないと難しいだろうなとも思う。その意味では、マーベル映画も撮ったこの監督が作った意味は大きいし、正解なのでは。

美術、衣装などがウェス・アンダーソン風と言われているけれど、そこまでこだわった美学は感じなかった。あの域にはそんな簡単に達せないから、放っておけ。

一番の欠点は、監督演じる少年のイマジナリー・フレンドであるヒトラーが悪目立ちするわりに効いていないこと。いっそ、出てこなくてもよかった気がする。そして、あのヒトラーと決別するなら最後の場面ではなく、後半、少年が最大の悲劇に襲われた瞬間では。

 

夫(会社員) ★★☆☆☆

 

正直、もうこういう時代背景、こういう展開の映画はあまり見たくない。人生で軽く100作は見ている。戦争の悲劇を繰り返さないために、絶えず新しい作品を作って訴えていかなければならないという考えも分かるけれど…。

 

キャラクターはみな魅力的で、サム・ロックウェルが演じるナチスの大尉が特によかった。「スリー・ビルボード」でもそうだったが、最初はダメなやつでも最後は絶対に良い人になるサム・ロックウェル。最後の市街戦で着る衣装のデザインをあれこれ考えていて、実際の戦闘のときに着ているところなんか最高だった。少年の家に隠れている少女を演じたトーマシン・マッケンジーも魅力的。

 

笑える場面はいつくかあって、特に、少年の家にナチスの検察がやってきて、家宅捜査するときに、全員がいちいちハイルヒトラーとあいさつしあうところは馬鹿馬鹿しくてよかった。

 

そして、この映画の一番優れている点は、男児のかわいらしさを存分に描いているところでは? それができている映画は、実はあまり多くない。メガネデブと自分で言っていたヨーキーかわいいよ、ヨーキー。

 

母子の間で、少年と少女の間で、相手の靴紐を結ぶというのが愛情表現になっている。そのいくつかの場面の差し込み方も含め、うまい構成だった。

 

※オスカー予想=無冠

ワイティティ監督の顔見世(こんな真面目な題材でも作れるんだよ)的な映画でしょう。アカデミー協会にとっては毎回入れておきたい題材なのでは。